本研究の目的は、高等専門学校の学生を対象とし、英語学習のニーズ分析を行い、その結果に基づいて、第二言語習得理論研究の分野で言語習得に効果的であると議論されている「タスクを中心とした指導(Task-Based Instruction)」の具体的な指導を考案・実施することであった。特に、本研究では、高専で実施されているICT(Information Communication and Technology)の専門教育の内容を取り入れ、高専生のニーズに応じたカリキュラムを提案することを試みた。平成21年度は、高等専門学校生を対象に英語学習に関するニーズ分析を実施した結果に基づき、タスクの開発を行った。ニーズ分析では、多くの学生がコミュニケーションを意識した学習の必要性を感じながらも、語彙や文法の知識の不足を強く感じていること、高学年は低学年と比較して、より社会や専門教育に関連した内容を英語学習においても学びたいと考えていることが明らかになった。このような結果を踏まえ、高等専門学校に適していると考えられるタスクを考案し、実践した。また、「タスクを中心とした指導」は、海外の英語教育でも実践が始まっていることから、台湾、アメリカ、ベルギーといった諸外国でのカリキュラムを研究し、日本の英語教育への応用性を検討した。ニーズ分析やタスクの実践、諸外国での研究成果を踏まえ、高等専門学校の低学年においては意味内容の伝達を中心としながらも、文法にも意識を向けさせるタスク(focused task)を、また高学年では、各学生の専門の研究内容を英語で発表する等の現実の課題に即したタスクをカリキュラムに取り入れることが有効であると言える。
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