研究概要 |
本年度は、予備調査として、英語の授業内で英語の多読を実施し、教科書による意図的語彙学習と多読による付随的語彙学習が、学習者の受容語彙サイズにどのような影響を与えるのかを調査することを主目的とする研究を行った。 具体的には、高専1年生(41名)を被験者に、約7ヶ月間、高校生用の検定教科書を主教材として使用した英語の授業内において、10〜15分間の多読活動を週1・2回実施した。被験者には、多読量を示すデータとして、その間に読破した多読図書の総語数を記録させた。さらに受容語彙サイズの変化を測定するため、多読開始前と終了後に英語語彙サイズテスト(望月, 1998)をそれそれ実施した。 その結果、被験者は、平均して約34, 000語を読破し、受容語彙サイズが約400語増加したことが確認された。この受容語彙サイズめ増加は、平成18年度に1年生の同じ英語科目の授業内で、検定教科書に加えて1年間に渡り英単語集を使用して継続的な意図的語彙学習を行った学習者の年間の受容語彙サイズの増加とほぼ同程度であった。このことから教科書による意図的語彙学習に多読による付随的語彙学習を組み合わせた学習法は、教科書と単語集による意図的語彙学習法と同程度の効果があることが示唆された。この結果は、僅かな時間を利用して行われた多読活動においても、付随的語彙学習が行われた可能件を示唆するものと言えよう。一方で、総読破語数と受容語彙サイズの増加語数の間には統計的に有意な相関関係が見られず、読書量の多さのみが、受容語彙サイズの増加に影響を与えたとは言い難いことも示唆された。 加えて、本調査では、多読が学習者の読解不安に与える影響の調査と多読に対する学習者の意識調査も行なわれ、読解不安の軽減に多読が有効であることが示唆され、学習者は多読実践を肯定的に評価していることが明らかになった。
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