本年度は、昨年度の予備調査の結果を二編の論文にまとめた。それらで示された研究の成果は、多読が、授業での精読や文法・単語学習、諸活動と相互補完関係にあり授業で学習した知識を使用する場となり得ていること、英語を学ぶ雰囲気作りや学習意欲の向上に貢献すること、英語のインプット増に大いに貢献し、全体的な英語力の伸び、読みのスピードの向上を実感させ、楽に読めるようになった等の意識の変化もたらすことが示されたことである。語彙サイズについて及ぼす影響については、語彙力の向上を実感した者がある程度いたものの、多読と語彙サイズの伸びとの統計的な因果関係は確認できなかった。一方で、教科書等でそれまで学習した語彙と何度も接する機会を与え、語彙知識を深化させる働きをしたことが示唆されたと同時に、未知語の意味を文脈から推測することで、語彙を付随的に学習している様子も窺え、語彙力の向上にプラスの影響を与えたことは否定できないことが示された。加えて、多読活動と同じ程度の授業時間を使い単語集による単語学習を行った前年度までの学習者と本調査の学習者は、ほぼ同じ程度の語彙サイズの伸びを示した。さらに、多読が読解不安の軽減に貢献するかについても調査し、読解不安の軽減に対する多読の効果が確認され、学習者タイプ別で見ると、特に、読解不安が高く、読解力が高い学習者に最も多読の効果が現れやすいことが示唆された。 以上に述べた研究のまとめと同時に、本年度も1年生1クラス、3年生1クラス、4年生4クラスにおいて多読活動を授業内に実施し、データ収集を行なった。昨年度の多読活動と異なる点として、多読の時間を15分間に延ばしたことと、「多読中に出会った未知語をメモし、後にその語を辞書で調べる」という指示を与えたクラスを設けたことが挙げられる。
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