高専1・3・4年生203名を対象に、1年間を通して、英語の授業内に15分間の多読を実施し、学習者の語彙サイズに多読が及ぼす影響を調査した。多読中の未知語への対応について、「どうしても意味が知りたい語に出会ったら記録しておき、読後に辞書で意味を確認する」ように指導した学習者群と「未知語は気にせず読み飛ばす」ように指導した学習者群を設け、語彙サイズの伸びに違いがでるか検証した。その結果、語彙サイズが1年生は252.95語、3年生は381.36語、4年生は332.98語増加した。加えて、辞書使用が指導された群と指導されなかった群間では、語彙サイズの増加の違いについて統計的な有意差が確認されなかったが、辞書使用の指導が行われた群内において、実際に未知語を調べた学習者と調べなかった学習者間を比較・検証した結果、辞書を使用した学習者は使用しなかった学習者より、語彙サイズの伸びが統計的に有意に高いことが示された。さらに、読書量の調査と多読に関する質問紙調査の結果から、辞書指導は、語彙力の向上の実感にプラスの影響を及ぼすが、読書量や多読の楽しさの実感、語彙力以外の英語力の向上の実感などにはマイナスの影響を与えないことが示唆された。 発展的な研究として、多読初期段階の高専生241名を被調査者に、どのような要因が多読の読書量にプラスの影響を及ぼすか調査した。その結果、教師が授業のなかで、学習者の知識の獲得や視野の拡大に対する意欲を向上させること、英語圏の文化や習慣に対する興味の喚起を促すこと、目標となる読書語数を示し多読の進歩状況に対して積極的に肯定的なフィードバックを与えること、さらに、初・中級英語学習者に対しては、学習者同士の結びつきを強め、学習者の自尊心を高めるような支援を行なうことが読書量にプラスの効果を与えることが示唆された。
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