オーストラリア国立公文書館における史料収集及び米国立公文書館からの史料取り寄せ(DVD)を行い、第一の課題である日中戦争期のソ連についての英米の認識の違いが東アジア政策の違いにどのように反映していたかを昨年度とは別の角度から検討した。オーストラリアの史料に注目したのは、英米両国の東アジア政策を強い関心を有しつつ第三者の立場で観察していた点を重視したためである。 昨年度の調査でアメリカの楽観的な対ソ認識が対日強硬姿勢につながっていることを明らかにしたが、オーストラリアは1939年末に日ソ合意の可能性について深刻な懸念をアメリカに伝達しようと試みていた。既存の研究においてイギリスとオーストラリアの東アジアにおける利害に距離が生じ、その結果、オーストラリアが独自の在外公館を開設する動きにつながっていったとされるが、今回の調査によりオーストラリアの外交当局はイギリス政府から十分な情報を提供されており、オーストラリア政府の立場についてもイギリス政府がアメリカ政府に適切に伝達していることを理解していたことが明らかになった。そして、問題はむしろ、イギリス政府にアメリカ政府の東アジア政策に影響を及ぼす力が不足していることにあると考えていたと言える。
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