1、唐代皇帝喪葬儀礼について記す『大唐元陵儀注』の注釈作業を完成させ、論文「大唐元陵儀注試釈(終章)」にまとめた。この成果をふまえ、朝鮮王朝期の国王喪葬儀礼について記す『国朝五礼儀』凶礼部分についての検討を開始した。本検討では、元陵儀注をはじめとする中国史料との比較を通じ、朝鮮王朝初期における中国儀礼受容の具体相を明らかにすることをめざしている。関連資料の収集・分析を進めるとともに、儀礼関連史跡の現地調査を積極的におこなった。 2、奈良時代儀礼を復原する上で重要な参考資料となる正倉院宝物に関して検討をおこない、論文「杜園と模写をめぐる人々-森川杜園『正倉院御物写』の世界(4)-」を執筆した。前年度末には研究の途中成果を、図録『森川杜園『正倉院御物写』の世界』としてまとめたが、本年度は本図録を増刷し、研究者・研究機関に広く配布することで、より多くの情報を収集することをめざした。配布を機に新たな資料に関する情報も寄せられ、今後の研究進展のための大きな足がかりとなった。 3、上記2の成果を中心に、韓国木簡学会第7回定期発表会、および高麗大学校日本研究センター第7回日研フォーラムにおいて、口頭発表をおこなった。日本における正倉院研究の最前線を紹介することに重点を置いたが、特に文物の国際交流に関して多くの示唆を得ることができ、東アジアにおける儀礼文化の伝播を考える本研究課題にとっても有益な機会となった。 4、律令制・儀礼史・正倉院関係図書を中心とした資料の収集をおこなった。
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