本研究は、日明関係に関わる史料の収集と分析を通じて日明関係史研究を深めていくこと、そしてそれを基礎に日明関係における大内氏の位置を明確にし、中世後期国際関係の実態とそれが国内政治史に与えた影響を解明していくことを目指すものである。具体的には、(1)各種入明記についての翻刻・注釈の作成を行なう。この際、入明記の記主の文集をはじめとする関連史料の検索成果を活用し、入明記および関連史料相互の関連付けを行なって、遣明船の故実・先例がいかなる形で伝授されているかを明確にし、入明記が伝える各回の遣明船の実態を詳細に検討する。(2)入明記の記主、特に最も多くの入明記を蓄積し自らも書き残した策彦周良の動向を大内氏との関係を軸に整理する。この成果をもとに大内氏の外交を支えた人脈とシステムを復元し、第一の成果と併せて大内氏の対明外交への参入とその掌握が国内におけるいかなる政治的折衝の結果であったのか、とりわけ故実・先例がものをいう外交関係において大内氏はいかにしてそれを獲得したのかという点を明確にし、中世後期政治史に日明関係の展開を有機的に位置づけることをめざす。
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