本年度は、史料の収集と研究を並行して行った。史料収集は、国立公文書館で中央教育審議会の議事録を、国会図書館憲政資料室でGHQ/SCAP文書を、それぞれ調査・収集した。中央教育審議会の議事録については、研究開始の段階で第一期、第二期中教審(昭和28~32年)の議事録を収集していた。しかし研究を進めるにつれて、先行研究の評価と中教審の審議実態との乖離が大きいことが判明した。そこで第三期中教審(昭和32~34年)まで研究範囲を広げて史料を収集し、研究を進めることとした。同時に補足史料として、横浜市が所有する森戸辰男関係文書(元文部大臣・中央教育審議会委員)の調査を進めた。 研究については、「中央教育審議会の実態に関する一考察-「教員養成の改善方策(答申)」(昭和33年)の形成過程を中心に-」(『広島大学文書館紀要』第12号)において、教員養成制度に対する中央教育審議会の議論をまとめた。本論文では特別委員会に焦点を合わせて審議過程を分析し、当該期の審議の特徴を明らかにした。同時に議論の内容についても分析を行い、教員養成の問題と新制大学の問題とが一体的に議論されていたことを明らかにした。こうした点を踏まえて、「逆コース」との関連だけで「教員養成の改善方策(答申)」を評価してきた先行研究に対して疑義を示した。 これまで中教審に関する研究は、史料的な限界により答申の本文のみを分析してきた。このため新規公開された議事録を分析することによって、今後も新たな事実を解明できると考えている。
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