本年度は作業の重点を研究に置き、補足的に史料の調査・収集を行った。当初の計画では、大達文相期の施策のうち、(1)新学制批判と(2)義務教育国庫負担問題を取り上げ、文部省と中央教育審議会にかかる事項を分析する予定であった。 しかし史料の分析を進めるうちに、答申の形成過程を個別に評価する前提として、第一期中教審全体の特徴を明らかにする必要を痛感した。すなわち中教審の期ごとに運営のあり方に差があり、この差が答申の形成に影響を与えているのではないかと考えたからである。 そこで(1)や(2)の議論を含み込む形で第一期中教審全体の運営実態を分析し、「第一期中央教育審議会の運営実態に関する一考察」(『広島大学文書館紀要』第13号)にまとめた。その結果、第1期中教審が自主的な意思と判断に基づいて審議会を運営していたことを明らかにし、「政府の御用委員会」という先行研究の評価に対して疑義を示した なお史料の調査・収集については、森戸辰男関係文書(横浜市所蔵分)や和光大学附属梅根記念図書・情報館等の調査を進めた。
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