本研究の課題は、佐貫→磐城平→延岡と所領移動を経験した譜代大名内藤家の文書に注目し、領域変更が史料に与える影響を検討する事である。 平成20年度は、文書の全体構造を把握する為、内藤家文書に伝世する江戸時代の段階での記録の管理帳簿であるところの現用時目録を抽出、撮影し、この中から、特に転封時の記録管理の状況を知りうる「御用部屋置付白木大箪笥引出目録」のデータベース化を行った。この作業によって、特に文書管理における江戸の重要性を把握する事が出来た。 転封過程の具体的検討は当初平成21年度に着手予定であったが、転封過程を把握する事によって、前述資料の分析がより効率的に行われるとの判断から、転封時における内藤藩の旧領地、新領地、江戸、大坂という四地点での動きを記録した「奥州磐城平日州延岡御所替覚帳」をデータベース化し、雑誌にて公開した。 これらの作業・分析によって様々な知見を得ることが出来たが、その中でも転封の構成要素が旧領地、新領地のみではなく、江戸、大坂を含めたものである事を把握出来た点は意義深く、今後の転封研究における重要な視点を得る事となった。
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