本研究の課題は、佐貫→磐城平→延岡と所領移動を経験した譜代大名内藤家の文書に注目し、領域変更が史料に与える影響を検討する事である。 転封をめぐる研究史を検討すると、転封を通じた幕藩関係の考察や、転封時の儀礼化された手続き・書類作成などについては研究があるものの、転封を実行するにあたっての藩内・藩同士の具体的なやり取り、領民との関係などは明らかにされていない。文書の作成・伝来の分析はこの点を踏まえたものでなければならない為、平成22年度は、従来の転封研究では注目されていなかった藩の日記史料に注目して、内藤家の磐城平から延岡への移動がどの様に実現されているか、その実態を明らかにした。この分析によって、江戸藩邸が情報の収集発信のセンターになっていること、転封業務の命令系統が江戸藩邸を中心に形作られている事が明らかになった。さらに、大名家に生じる経済的な負担や家中に与える影響、他大名家とのやり取りの重要性などについても指摘する事が出来た。
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