本年度は研究遂行に必要な史料や文献等を調査・収集し、次年度以降の本格的な分析に向けての態勢を整えた。 1. 郡行政史料の調査 (1)「度会郡公報」の所在詳細調査を、伊勢市内の区有文書を中心に実施した。その結果、明治期については明治36年4月からの451号分のすべて、大正期については大正15年5月までの653号分のうち、646号分の現存が確認された。現存する郡(公)報としては最大規模であることを再確認した。これをもとに郡行政と郡内団体についての事例研究が進むことが期待できる。またこれに関連して、三重県内他郡の郡公報の予備調査を実施し、「志摩郡公報」の一部を複写した。 (2)飽海郡役所史料を調査した(2. (3)を参照)。 (3)三島通庸関係文書(国立国会図書館憲政資料室蔵)や郡役所視察報告書(国立公文書蔵)を調査、主に明治10年代の郡役所の事務・人事にろいての史料を収集した。 2. 郷友会に関する調査 (1)三重県度会郡出身者で構成される度会郷友会が発行した、雑誌『度会』や『度会人物誌』を収集した。これらにより同会の活動や人的結合の実態解明が進むだろう。 (2)郷友会・同郷団体に関する文献・論文の收集。 (3)(1)に関運して、山形県圧内地方の飽海・東田川・西田川の三郡により構成される「荘内会」の史料を・調査収集。同会は三郡共通の行政課題や事業に対応していた。このような郡連合の団体と、一郡単位の団体とを比較対照させることで、地域帰属意識の多層性を析出できるのではないか、との見通しが得られた。
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