研究概要 |
本研究では、第一に、北東北諸藩(具体的には、弘前藩・南部藩・八戸藩の三藩)の藩庁日記に登場する松前・蝦夷地関係記事を網羅的・体系的に把握し、データベース化を行うことを目的としている。そして、第二に、その作業を通じて、近世期の松前・蝦夷地をめぐる政治的・社会的・経済的・文化的な状況に関して、新たな事実と論点を提示することも目的としている。特に、近世期の北海道を対象とする研究、それも近世中期までの時期を扱った研究においては、松前藩政に関わる文書や藩領域内の地方文書の不足に基因する史料的な限界が指摘されており、本研究を通じて把握する資料によって、その「限界」が多少なりとも克服されることが期待される。 平成23年度は、前年度からの継続調査課題である、弘前藩の藩庁日記『弘前藩国日記』(青森県立図書館所蔵マイクロフィルムを利用。原本の所蔵は弘前市立弘前図書館)の調査、南部藩の藩庁日記『盛岡藩家老席日記』の調査、及びその周辺史料の調査を主として実施した。主な内容は、下記の通りである。 1、『弘前藩国日記』文久元年(1861)12月~慶応3年(1867)12月までの合計49冊を調査し、松前・蝦夷地関係記事を複写した。これで、『国日記』の全3,300冊余の調査を終えた。 2、南部藩の藩庁日記『盛岡藩家老席日記』の調査を終えた。既に史料集として翻刻されている年代は刊本を使用し、それ以外の年代については、マイクロフィルムによる調査を実施した。 3、八戸藩の藩庁日記について、『八戸市史』史料編(近世1~10)をもとに調査を実施した。 4、『弘前藩国日記』の関連調査を、弘前市立弘前図書館所蔵の郷土史料を中心に実施した。特に弘前近郊の豪農が記した日々の詳細な記録『金木屋日記』(嘉永6年(1853)~慶応元年(1865)、全19冊)の中に、松前・蝦夷地に関連する政治・経済・文化的な記事が豊富に含まれていることを確認した。
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