本研究は、全国の鉱山絵巻についてその分類や年代特定を試みながら、鉱山技術と鉱山絵巻作成の伝播・交流を体系的に明らかにし、それらを近世日本鉱山史全体のなかに位置づけようとするものである。 本年度は、国立科学博物館、京都府立総合資料館、三菱UFJ貨幣資料館、個人等が所蔵する絵巻原史料18点を調査した。また写真等で2点の絵巻史料のデータを入手し、計20点の構成・内容等を分析した。その内訳は、佐渡金銀山絵巻18点、石見銀山絵巻1点、生野銀山絵巻1点である。全国には多数の鉱山絵巻は、各鉱山の特色を示しながらも、展開・構図に強い類似性が確認さけた。鉱山技術については、石見銀山や佐渡金銀山といった先進鉱山の技術が日本各地の鉱山に伝播したことが知られているが、各地の鉱山絵巻の一部については、そのような先進鉱山の絵巻を手本として描かれるようになった可能性を示すことができた。特に、佐渡金銀山絵巻は100点以上の存在が知られおり、数量や質において他の鉱山絵巻を圧倒しているため、佐渡金銀山絵巻を軸とした比較検討が有効であることを再確認できた。 また、昨年度に引き続き文献調査を併行し、調査絵巻に描かれる諸技術の導入年代等を調査し、鉱山間の技術の伝播・交流や絵巻作成年代等について検討を行った。
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