本研究課題は、中国における首長制社会(あるいは初期王朝・初期国家)から専制国家への展開を具体的に把握することである。王朝に即していえば、「夏」・殷・西周から東周(春秋・戦国)・秦漢への政体の展開を捉えることである。 中国の戦国時代は新石器時代以来の歴史的展開の結実としての側面と秦漢帝国へと接続する出発点として側面、その両面を備えた過渡期として、報告者は注目している。 具体的には戦国文字と記録媒体の基礎的研究・分析を通じて、戦国史像の再構成を行うことを課題とする。 4年間の研究期間にはとくに戦国諸国の政治制度や手工業生産体制の違いを如実に示す青銅兵器という記録媒体の銘文を主たる対象とする。 (2)研究の計画 秦系青銅器は別経費にて進めているので、東方六国のものを対象とする。 1年目(平成20年度)=趙国兵器研究 2年目(同21)=中原地域青銅器の編年 3年目(同22)=燕斉兵器研究 4年目(同23)=呉越・楚系青銅兵器 (3)研究の方法 4年間の研究の方法は比較的共通しており、基本的に下記のような作業を進める。 (2)器形・銘文の模写(2)伝世・所蔵など情報の収集整理(3)字書・釈読例を検討(4)自身の釈文作成 こうした作業過程において、さまざまな着想が得られる。着想を深め、検証するために関連研究を渉猟し、また精読する。 (4)研究の特色 本研究は古文字学・考古学研究の成果に学ぶ歴史学研究である。 古文字学は文字を釈読するが、なぜ銘文を記入する兵器としない兵器があるのか、或いは兵器種類の国ごとの使用傾向の違いや原材料がどこからもたらされたのか、などの課題について通常検討しない。 考古学は型式編年を行うが、伝世品を一般に排除する。また古典籍は文献史学の仕事として住み分ける傾向にある。そのため戦国時代の全体を論じるのには困難がともなう。 本研究はその間隙を結び、総合化して戦国史像の再構成をおこないたいと考えている。
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