史料収集に関しては、昨年度購入を見合わせたハーッジー・ハリーファの文献目録や、イブン・アル・ジャウジーの年代記等、大部のアラビア語史料を数点購入した。それと並行して、アイルランド・ダブリンのチェスター・ビーティー図書館、イギリス・オクスフォードのボドリアン図書館より、アイニーの著作それに関連するアラビア語写本の複写を取り寄せた。また、9月に行ったトルコ・チュニジアでの海外調査旅行では、チュニジアの国立図書館を中心に写本調査を行い、従来研究者の間でも使用されることの少なかったアイニーの著作の新たな写本を確認し、複写を入手した。これら、複写の形で入手したアラビア語写本史料ついては、それぞれ印刷・製本し、利用しやすい形で整理して保存した。それらをもとにして、前年度に開始した校訂・翻訳作業を継続し、分析を行った。 研究成果の発表としては、日本オリエント学会第51回大会において、ポスター発表を行った。これは、オスマン朝宮廷においてオスマン語翻訳をするために収集された一群のアイニー写本を、その前書きや奥書および内容の比較から分析した文献学的研究の成果であり、本研究全体の基礎をなす重要な部分である。一方、アイニーの政治的キャリアや彼と同時代人との社会的関係に関する分析も行っているが、これについてはさらなる史料整理を行い、次年度に改めて論文として発表する予定である。
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