2008年度は、葛陵楚簡「ト筮祭祷簡」の赤外線撮影・分析研究を行うのに必要不可欠な赤外線撮影対応のデジタルー眼レフカメラ購入について関係諸機関との交渉・調整に膨大な時間を費やし、年度末に購入・設置の問題を解決した。実際の撮影およびデータを共有する段階に至らなかったため、まず各「ト筮祭祷簡]の比較分析を行う上で、最も体例が整っていて基準とすべき包山楚簡「ト筮祭祷簡」の訳注作成を、発掘報告書『包山楚墓』(荊沙鉄路考古隊、文物出版社、1991年)所収の釈文注釈-図版を基にし、『包山楚簡初探』(陳偉、武漢大学出版社、1996年)・『包山楚簡解詁』(劉信芳、芸文印書館、2003年)の専著や関連論文など、これまでに蓄積されている先行研究の成果を集成する形で進めた。また葛陵楚簡の報告書『新蔡葛陵楚墓』(河南省文物考古研究所編著、大象出版社、2003年)所収の釈文・図版に拠って基本的な分類および整理を進め、関連論文の収集分析を行った。そして、図版が公表されていない天星観楚簡および秦家嘴楚簡について『楚系簡帛文字編』(縢壬生、湖北教育出版社、1995年)から「ト筮祭祷簡」を復元した各「釈文輯校](晏昌貴、2005年)を基に貞人や占具、祭祀名称について検討した。そして以上のような各「ト筮祭祷簡」を整理したテキストデータを用いて相互比較を行った。 その結果09年度以降の分析研究のベースとなるような葛陵楚簡「ト筮祭祷簡」固有の特徴を幾つか見出すことができた。
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