2010年度は、前年度から継続中の包山楚簡「卜笠祭祷簡」の訳注作成、および望山楚簡・葛陵楚簡の各「卜笠祭祷簡」の分類・逐字対照表の作成を進めた。初年度以来、葛陵楚簡撮影のために関係諸機関と交渉・調整していた赤外線デジタルカメラは最終的に日本での購入が認められず、当初の計画を変更せざるを得なかった。ただし、包山楚簡の一部および望山楚簡の全部については、以前参加していた研究プログラムでの機材で撮影した赤外線写真データに基づく新しいテキストが『楚地出土戦国簡冊[14種]』(陳偉等著、経済科学出版社、2009年9月)として昨年度刊行され、当該書に赤外線写真の図版は収録されていないとは言え、現時点で最も信頼できる釈文・注釈であることから、当該書に基づいてこれまで作成してきた各「卜笠祭祷簡」のテキストデータの大幅な改訂を訳注作成などと並行して行った。 また8月2日~17日、武漢大学簡帛研究センターに訪問研究者として招聘され、研究の他、簡牘資料の出土地の見学や新出簡牘の実見を行った。さらに12月6日~8日に同研究センターで開催された中国簡帛学国際論壇に出席し、「卜笠祭祷簡」との関連性が指摘される「日書」のうち、楚文化圏ではない地域から出土した天水放馬灘秦簡「日書」に対して初歩的検討を加えた学会発表を行った他、新出簡牘資料の講読に参加した。
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