2011年度は、前年度から継続中の包山楚簡「卜筮祭祷簡」の訳注作成を進め、また望山楚簡・葛陵楚簡の各「卜筮祭祷簡」の分類・逐字対照表の作成を進めた。前年度に始めた赤外線写真データに基づく新しいテキスト『楚地出土戦国簡冊[14種]』(陳偉等著、経済科学出版社、2009年9月)に基づく各「卜筮祭祷簡」のテキストデータの大幅な改訂は、中国側の研究協力者である武漢大学簡帛研究センターの陳偉教授から当該書に文字の上で幾つかの間違いがあるとの教示を受け、2010年12月に刊行された第二版に基づいて行った。その成果として、「簡牘資料中所見「巫」的諸種形象以卜筮祭祷簡和《日書》為主的考察」(縞天喩主編『人文論叢』2010年巻、中国社会科学出版社、2011年11月)を発表し、簡憤資料に見える「巫」の諸相には3種類あり、「卜筮祭祷簡」における「巫」は祭祀対象であって、卜筮や祭祀に従事する生身の宗教的職能者であると明確に判断できる例がないこと、それが秦漢時代の「日書」になると、祭祀対象と身分職業の総称という2種類の「巫」が見え、当時の社会が「巫」という身分職業に否定的なイメージをもっていたことなどを明らかにした。また2011年11月5日の日本秦漢史学会第23回大会で「岳麓秦簡「占夢書」初探」と題する発表を行い、「占夢書」の構成や背景にある夢観、時令思想的な原理、理論と具体的な占辞との一定程度の乖離、社会における受容層などについて考察し、多種多様な巫祝集団によって担われていたと推定される中国古代の宗教文化の一面を読み解いた。
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