本年度は3年間の研究計画の最終年度であり、昨年度に引き続き研究のための基盤整備と情報収集を行うと共に、研究成果の取りまとめ作業を行った。まず「A.各入貢地に即した文献資料の捜索・整理と相互比較」については、文献資料の捜索・整理作業をさらに進め、特に中国の上海図書館・国家図書館において文献調査を実施した。次いで、「B.各入貢地における現地調査」については、2010年8月8日~19日に甘粛省(嘉峪関市・張掖市及び蘭州市周辺地域)の現地調査を、また2011年2月20日~3月3日には北京市周辺・山西省(大同市周辺)および河北省(張家口市・秦皇島市)の現地調査をそれぞれ行った。甘粛省は西域諸国の、山西省・河北省は北辺及び東北異民族等の入貢ルートとして重要な地点であり、関連史跡及びその地理的特徴と現状を実見できたことは有意義であった。当初の計画では新疆ウイグル族自治区のハミ・トルファンの調査を盛り込む予定であったが、政情不安のため実現しなかったのは残念である。「C.『明実録』に基づく網羅的な朝貢事例表の作成」については、論考「明朝の「朝貢体制」の体系的把握に向けて-『明実録』による憲宗期朝貢事例表の作成を中心に」として朝貢事例表の一部を発表した。これらの成果を踏まえつつ、インターネット上でのデータベースとしての公開についてもこれから順次進めていく予定である。
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