6月に札幌で事前の予備的調査を実施し、その成果に基づいて、9月に約1ヶ月にわたってロシア現地での研究調査を実施した。モスクワでは、ロシア国立経済文書館(РΓАЭ)において、全国紙『農民新聞』が1920年代において数次にわたり実施した通信員アンケート・ファイルの分析に着手したが、分量の関係で全体の4分の1程度の精査にとどまった。同史料は1920年代後半の農村末端の積極的投書主体の生の声を伝えるものであり、次年度以降も引き続き分析を行い、現在準備中の研究論文「後期ネップの農村出版活動と通信員運動(1926-27年)〔仮題〕」にその成果を順次反映させていく予定である。 また、モスクワでの調査の合間をぬって、当初平成21年に予定していたサンクト・ペテルブルグでの研究調査を1年前倒しして実施した。サンクト・ペテルブルク中央国立文学・芸術文書館(ЦΓАЛИ СΠб)では、今のところ同館のみに所蔵が確認されている1920年代の検閲文書(「秘密該当情報一覧」)の分析にあたった。同史料はロシア人研究者によってこれまでごく一部が紹介されているのみであるが、当該期の検閲政策の十全な評価のためには、その内容の総体的把握と発行時期ごとの比較対象を詳細に行う必要がある。よってまずは当該史料の全文を、適宜注釈を付しつつ、次年度以降数回に分けて紹介していく予定である。 なお本研究の成果報告の一環として、平成21年2月に青山学院女子短期大学・総合文化研究所にて講演「『独裁』と『世論』-1920年代ソ連における改良・改革・革命」を予定していたが、先方の事情で同年4月に順延となった。講演実施後、その内容は、同研究所の紀要に掲載される予定である。
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