一昨年に引き続き秋期にロシア現地での史料調査を実施し、モスクワのロシア国立経済文書館(РГАЭ)で1920年代のセリコル・アンケートの分析に従事したが、分量の膨大さゆえ、約半数程度の閲覧で時間切れとなった。末端のセリコルの「生の声」を伝える同史料はアルファベット順に配置されており、網羅的分析が不可欠なので、今後は時間的制約を考慮し、当初予定していた統計的分析よりも内容的分析を優先して最終年度における通読を目指す。 論文関連では、大学紀要にて、一昨年サンクトペテルブルク中央国立文学・芸術文書館(ЦГАЛИСПб)で収集した検閲関連史料(1925年の『機密該当情報一覧』)の全文を序文・注釈を付して紹介。同文書はこれまで部分的にしか紹介されたことがなく、今後は同種の文書の時系列での紹介を接続し、それらの相互比較を元にソヴィエト検閲活動の展開の具体的把握を図る。また、松井康浩編『20世紀ロシア史と日露関係の展望-議論と研究の最前線』(九州大学出版会、2010年)に論文「権利と人民との『対話』-初期ソヴィエト政権下における民衆の投書-」を発表し、近年の研究動向の総括と再検討により、1997年発表の論文以来の研究史整理の大幅なアップデートを行なった。 報告・講演関連では、先方の都合で順延されていた青山学院女子短期大学・総合文化研究所での講演を4月に無事実施。その内容は近日中に同研究所の紀要に掲載される予定である。その他にも、ソ連東欧史研究会や社会経済史学会東北部会で後期ネップの出版活動に関する研究報告をそれぞれ実施し、出席者と有益な意見交換を行なうことができた。
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