一昨年、昨年に引き続き秋期にロシア現地での史料調査を実施し、モスクワのロシア国立経済文書館(РГАЭ)で1920年代のセリコル・アンケートの分析を続行、3年目にしてついに同史料の通観を終了した。分量の膨大さゆえ統計的な分析は昨年度で断念したが、内容的に特に重要なものについては抜書きを作成しており、今後随時論文などにそれらの成果を反映させていく予定である。 論文関連では、こちらも昨年度に続き大学紀要にて、初年度サンクトペテルブルク中央国立文学・芸術文書館(ЦГАЛИ СПб)で収集した検閲関連史料の続編(1927年の『機密該当問題一覧』)の全文を序文・注釈を付して紹介した。同文書も、前回紹介の1925年のそれと同様、これまで部分的にしか紹介されたことがなく、その内容上の変化から当該期の検閲政策の展開を明らかにするために、両者の詳細な比較検討を序文において行った。以後も同様の作業を継続し、ソヴィエト検閲制度の展開過程を詳細に跡付けていく予定である。さらに、一昨年に青山学院女子短期大学・総合文化研究所で実施した講演の内容に加筆・修正を加えたものを、同研究所の年報に「〈講演記録〉初期ソ連における改革・改良・革命:「上からの革命」再考」として発表した。 報告・講演関連では、前述の検閲関連文書の研究成果を踏まえて、初期ソ連の検閲政策の再検討を試みた報告「『タルムード』の前史-初期ソヴィエト検閲制度の展開(1922-1927年)」を福島大学史学会大会で行い、これまでの検閲研究の一定の総括と、出席者との有益な意見交換を行うことができた。
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