本研究の目的は、ビザンツ帝国において進展した教会と修道院の改革運動の特質を、とりわけ帝国の政治・社会状況および修道士の生活環境との関連において解明し、11世紀以降、西ヨーロッパ・カトリック世界で進展した教会改革、いわゆるグレゴリウス改革との比較を試みることである。本研究では、ビザンツにおいて教会・修道院の改革運動が本格的に開始された11世紀から、帝国が滅亡する1453年までの約4世紀を以下のように区分し、それぞれの時期について、記述史料の分析と現地での地誌調査(おもにトルコ共和国内の都市・遺跡)の両面から、改革運動の要因、構造、後代への影響を明らかにする。 (1)初期:11世紀から12世紀末まで 成文規則(ティピコン)の導入による修道生活の再編と俗人に対する修道院貸与慣行の改革について (2)中期:13世紀初めから14世紀初めまで 総主教アタナシオスの改革と彼の広範な改革を可能ならしめた政治的背景について (3)末期:14世紀初めから帝国滅亡まで 正教の神秘主義霊性ヘシカズムの興隆とヘシカズムを実践する修道士(ヘシカスト)の教会組織と帝国の政治と社会へのかかわりについて
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