平成20年度については、平安時代後期における、平安京へ運京されたと考えられている瓦の生産地について、尾張地域(猿投窯東山地区・知多)・播磨地域(神出・魚住)・讃岐地域(十瓶山)の資料調査をそれぞれおこない、資料の図化・データ化をおこなうとともに、調査担当者などとの意見の交換をおこなった。 これらの窯生産地個々に関して、現在までに提示されている論考や報告は、播磨を除いて非常に少なく、むろんそれらを総合した議論は、1978年の上原真人氏の論考「古代末期における瓦生産体制の変革」(『古代研究』13・14)が提示されて以来、ここ30年ほどほとんど進行していなかったというのが現状であり、現地での情報交換も含めた資料収集は、研究を進行させる上でたいへん意義のあることであった。 また、東海地方に関しては、生産体制についての論考を著し、発表をおこなった(2008年度日本考古学協会愛知大会)。消費地での状況や、詳細な年代観などを含め、まだ研究途上ではあるものの、猿投・知多での瓦の年代観は、併焼する山茶碗の年代観とも深く関わるものであり、年代や管掌者を含めた当該地の窯業生産全般を考えるにあたって、有効な問題提起がおこなえたと思われる。 消費地の調査についても、鎌倉で出土する尾張産瓦とその系譜の瓦の調査に着手しており、21年度には一定の成果が得られるものと考えている。
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