研究概要 |
22年度は、おもに尾張産瓦の分析をおこなった。尾張産の平安末~鎌倉前期の瓦は、その前半期は京都に、後半期には鎌倉や相模地域へと遠隔地供給されていることが、これまでの研究で論じられている。21年度には永福寺など鎌倉周辺出土資料および、相模地域での出土事例との比較検討を、実際の遺物観察の成果よりおこなっており、22年度においても引き続き検討をした。その結果、永福寺や千葉寺遺跡出土の軒瓦においても、尾張東山窯(八事裏山窯)産瓦との同笵の認定が難しく(知多半島の阿久比板山窯からも、東山窯と同文の瓦が出土している)、またその他の遺跡では丸平瓦のみの出土しかない例もみられる中で、肉眼観察のみから東山窯産であると比定している現況では、今後、当該期の造瓦組織や瓦の需給関係を復原していく研究の土台とはなりにくいという結論に至った。 そのうえで、これらの瓦に対して、胎土分析をおこなうことで、科学的に立証することが、研究の前提として必要であると考えた。,そのため22年度予算の一部を使用し、生産地側の尾張東山古窯跡群出土瓦の胎土分析をおこなった。その結果、東山窯産の瓦の胎土は大きく2つにわかれており、京都に供給されたと考えられる前半期の瓦と、鎌倉・相模に供給されたと考えられる後半期の瓦では、成分組成に若干の差異がみうけられた。この成果は、消費地資料の分析成果と併せて、今後発表予定である。
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