平成20年度は、まず、近畿地方・東部瀬戸内地方における弥生時代の加工斧資料を集成しつつ、近畿地方において出土している弥生時代の加工斧を実見し、多角的なデータ収集をおこなった。 データは、加工斧の長さ・幅・厚さ・重量といった、一般的な項目のほか、比重と色調についても計測した。比重の計測には、島津製作所SMK-101を用い、色調の計測には、物品費にて購入した、日本電色のSK333を用いた。 計測点数は、兵庫県内の(玉津田中遺跡例、平方遺跡、中西山遺跡、長尾・沖田遺跡・大垣内遺跡、七日市遺跡、有鼻遺跡、奈カリ与遺跡など)23遺跡計67点と、大阪府泉大津市池上曽根遺跡の96点の計163点である。 基本的には、肉眼で藍閃石-塩基性片岩と鑑定できる資料を中心に計測し、その比較資料として塩基片岩製のもの、粘板岩製のもの、凝灰岩製、層灰岩製のものについても、それぞれ数点ずつ計測した。 結果、比重値については、藍閃石-塩基性片岩製の石器が、比重値が3.03dを超える数値を示すのに対し、塩基性片岩は2.9d〜3.00d、その他は2.7d〜2.8dで、明確に異なることが判明した。とくに、加工斧の藍閃石-塩基性片岩と石包丁に多用される塩基性片岩に違いがみられる点は、原産地の相違を示している可能性が高い。色調についても、塩基性片岩は藍閃石-塩基性片岩と比較して明るさ、色味のデータに相違点がみられることがわかりつつある。これらと未成品の分布と合わせて考えることによって、生産と流通の実体解明へつながる可能性が高まったといえる。
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