平成21年度は、近畿地方・東部瀬戸内地方における弥生時代の加工斧資料を集成しつつ、近畿地方・四国地方において出土している弥生時代の加工斧を実見し、多角的なデータ収集をおこなった。 データは、加工斧の長さ・幅・厚さ・重量といった、一般的な項目のほか、比重と色調についても計測した。比重の計測には、島津製作所SMK-101を用い、色調の計測には、物品費にて購入した、日本電色のSK333を用いた。 計測点数は大阪府東大阪市亀虎川遺跡、大阪府泉大津市池上曽根遺跡、香川県東かがわ市池の奥遺跡、同さぬき市鴨部・川田遺跡、善通寺市一ノ谷遺跡、同市旧練兵場遺跡の計300点以上である。 基本的には肉眼で藍閃石-塩基性片岩・塩基性片岩と鑑定できる資料を中心に計測し、その比較資料として粘板岩製のもの、凝灰岩製、層灰岩製のものについても計測した。 その結果、比重値については、藍閃石-塩基性片岩製の石器が、比重値が3.03dを超える数値を示すのに対し、塩基性片岩は2.9d~3.00d、その他は2.7d~2.8dで、明確に異なることを追認した。とくに、加工斧の藍閃石-塩基性片岩と石包丁に多用される塩基性片岩に違いがみられる点は、原産地の相違を示している可能性が高い。色調についても、塩基性片岩は藍閃石-塩基性片岩と比較して明るさ、色味のデータに相違点がみられることがわかりつつある。昨年度のデータをほぼ、追認することが出来たといえる。これらと未成品の分布と合わせて考えることによって、生産と流通の実体解明へつながる可能性が高まったといえる。 たお、藍閃石-塩基性片岩との比較資料として、兵庫県南あわじ市沼島においてフィールド調査をおこない、塩基性片岩の標本収集をおこなった。 引き続きデータの収集をおこなうとともに、徳島市眉山周辺のフィールド調査をおこない、藍閃石-塩基性片岩の標本採集をおこなって、上記データとの比較検討を行いたい。
|