平成22年度は、昨年度に引き続き、近畿地方・東部瀬戸内地方における弥生時代の加工斧資料を集成しつつ、近畿地方・四国地方において出土している弥生時代の加工斧を実見し、多角的なデータ収集をおこなった。 調査点数は大阪府泉南市男里遺跡、堺市大庭寺・伏尾遺跡、兵庫県神戸市伯母野山遺跡、芦屋市全下山遺跡、姫路市大山神社遺跡、たつの市小神辻の堂遺跡、和歌山県御坊市堅田遺跡、海南市岡村遺跡、和歌山市太田・黒田遺跡、橋本市柏原遺跡、かつらぎ町西飯降II遺跡、香川県高松市さこ・長池遺跡、同市前田東・中村遺跡、同市上天神遺跡、善通寺市旧練兵場遺跡、丸亀市中の池遺跡、徳島県徳島市庄・蔵本遺跡、同南庄遺跡、同矢野遺跡、鳴門市光勝院寺内遺跡、同カネガ谷遺跡、同桧はちまき山遺跡、阿波市右白吉谷遺跡、同桜ノ岡遺跡、同前田遺跡、東みよし町丸山遺跡、同大谷尻遺跡など計500点以上である。 基本的には肉眼で藍閃石-塩基性片岩・塩基性片岩と鑑定できる資料存中心に計測し、その比較資料として粘板岩製のもの、凝灰岩製、層灰岩製のものについても計測した。 その結果、比重値については、藍閃石-塩基性片岩製の石器が、比重値が3.03dを超える数値を示すのに対し、塩基性片岩は2.9d~3.00d、その他は2.7d~2、8dで、明確に異なることを追認した。とくに、加工斧の藍閃石-塩基性片岩と石包丁に多用される塩基性片岩に違いがみられる点は、原産地の相違を示している可能性が高い。色調についても、塩基性片岩は藍閃石-塩基性片岩と比較して明るさ、色味のデータに相違点がみられることがわかりつつある。昨年度のデータをほぼ、追認することが出来たといえる。これらと未成品の分布と合わせて考えることによって、生産と流通の実体解明へつながる可能性が高まったといえる。 なお、藍閃石-塩基性片岩の原産地分析のための比較資料として、徳島県吉野川市高越山、徳島市眉山においてフィールド調査をおこない、塩基性片岩の標本収集をおこった。 平成23年度は、引き続きデータの収集をおこなうとともに、原産地分析をおこない、研究成果を冊子として報告書にまとめたい。
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