西南中国(主として中国雲南省)及び東南アジア大陸部(うちベトナム・カンボジア・タイ・ミャンマー)にかけて分布する少数民族が継承してきた伝統的土器製作(以下、「土器製作」という)の比較研究を行った。 平成20年度の「研究実施計画」では、当初、ミャンマーにおける現地調査を企図していたものの、5月のサイクロン被害を受けて、急遽、計画を変更せざるをえなくなり、タイ東北部、ラオス南部、ベトナム南部、中国雲南省の各地において、土器製作の現地調査を実施することになった。 上記の調査地における土器製作は、地域や民族の差異を越えて、製作技術及び生産様式の異同が見られた。これらに関する比較研究の成果は、「11. 研究成果」のとおり、その一部を公表することができた。平成21年度は、平成20年度の現地調査におけるデータ整理を進めることにしたい。 また、上記の調査地、すなわち、辺境地域に及んだグローバル化の影響は、生活様式を現代化させ、これと同調して、土器製作の伝統的様式を変容させていた。さらには、工業製品が大量流入したことで、伝統的土器の不要化が進んでいた。 さらに、辺境地域の次世代の担い手である若者は、テレビやインターネットを通して、都市的生活に対する憧憬を募らせている。そのため、若者が出稼ぎに出てしまい、伝統の後継者が不在の状況に陥っている。ほとんどの地域で製作者が高齢化しており、近い将来、土器製作の伝統が断絶・喪失する危険を孕んでいることも明らかとなった。
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