平成22年度の交付申請書では、ミャンマーにおける予備調査を研究実施計画に盛り込んだ。しかしながら、11月の民主化総選挙をめぐって、民主化勢力及び少数民族武装勢力が活発化し、全土にわたる政情及び治安の不安定化が惹き起こされたため、当該地域における予備調査を断念した。ラオス北部、タイ北部及び東北部における現地調査に切り替えることによって、ミャンマーとの比較研究の材料を獲得するためである。伝統的土器製作の広域間比較によって、その地域性を明らかにすることができた。また、当該地域の経済発展に伴う生活様式及び物質文化を目の当たりにし、土器製作の伝統的様式の変容の過程を整理することができた。現地調査の実績概要は、以下のとおりである。 1月上旬ラオスルアンパバーン県における現地調査を実施し、2008年に調査したベトナム北部との比較を行った。その後、ベトナム中部及びカンボジア東北部との比較を目的として、ラオス南部パクセー県及びアッタプー県における存否確認調査を実施した。 2月上旬ミャンマーとの比較研究の予備調査と位置付けて、タイ中央部及び北部における現地調査を実施した。スコータイ県-チェンマイ県-ナーン県にわたる広域調査を実施し、インタビュー及び参与観察にもとづいて、製作技術及び生産様式を整理することができた。 3月上旬タイ東北部における現地調査を実施し、タイ北部及びラオス中部との比較を行った。ノーンカイ県及びルーイ県において、インタビュー及び参与観察等を実施した。
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