20年度は主に関東の北武蔵地域を中心に、埴輪の分析を行った。埴輪工房の具体像の復原という目的に応じて、生産遺跡出土品に焦点をあて、刷毛目データベースを構築した。分析対象としたのは、姥ヶ沢・桜山・生出塚埴輪窯である 姥ヶ沢・桜山埴輪窯の分析では、中規模生産窯の様相が明らかになった。比較的短い期間の中で生産が行われ、基本的には周辺の小規模境に供給し、大型品に関しては埼玉古墳群へ供給していたことが判明した。その成果については、「埴輪生産遺跡研究の新視角」として論文にまとめ、現在、雑誌に投稿中である。2009年度中に掲載を予定している。 生出塚埴輪窯の分析では、関東最大規模の生産地の様相が明らかになった。26基の供給古墳を刷毛目データベースによって特定し、I期〜III期に編年した。埼玉古墳群へ大型品を継続的に供給し、中小型品はI期からIII期にかけて供給範囲を拡大していく状況を確認した。生出塚の各時期の各期は、地域、あるいは畿内政権をも含んだ列島全体の大きな歴史的動態と連動していると考える。今後は、その成果を歴史的に位置付けていく。なお、生出塚遺跡の分析成果については、「埴輪工房の復原」として論文にまとめ、現在、雑誌に投稿中である。2009年度中に掲載を予定している。 特に本年度は、現在まで行ってきた関東の埴輪の分析成果を、『埴輪生産と地域社会』(2009年3月刊行、学生社)としてまとめた。現段階の最新の分析方法を盛り込んだ単行本であり、今後の埴輪研究のスタンダードになる方法論を提示できた。なお、投稿済みの2本の論文とあわせて、20年度の分析成果を21年度にまとめる予定である。
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