古墳時代前期の埴輪に焦点を絞り、南九州1カ所、北部九州6カ所、四国1箇所の合計8古墳、約300点の調査をおこなった。 埴輪に認められる赤色顔料は、実体・生物顕微鏡観察、蛍光X線分析、X線回折の結果を総合すると、全てベンガラ(赤鉄鉱)と考えられた。 これらベンガラは直径1μmのパイプ状の粒子を含むもの(ベンガラ(P))と含まないもの(ベンガラ(非P))に分類できた。ベンガラ(P)は先行研究により鉄細菌を原料とするものであることが解っている。 埴輪のベンガラは北部九州の北側ではベンガラ(非P)が主体となり、北部九州の南側ではベンガラ(非P)とベンガラ(P)の両者が認められた。南九州ではベンガラ(P)であった。 これまでの調査事例から近畿地方の埴輪の赤色顔料は全てベンガラで、その種類はベンガラ(P)を主体とすることが判明しており、今回の調査で四国や南九州も同様である見通しがついた。一方、北部九州を中心にベンガラ(非P)を用いるという地域性がある可能性も指摘できた。この結果は前期前方後円(方)墳の主体部内で用いられたベンガラの種類の傾向とも今のところ一致している。 平成21年度は近畿地方を中心に調査を進めたい。
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