埴輪に認められる赤色顔料について、顕微鏡やX線分析装置を用い粒子の形態分類や鉱物組成による分類を行い、編年や地域性を検討することを目的として実施した。 今年度は中国・四国、近畿地方を中心に調査をおこなった。埴輪に認められる赤色顔料は、全てベンガラであった。出土ベンガラは直径1μmのパイプ状粒子を含むもの(以下、ベンガラ(P))と、これを含まないもの(以下、ベンガラ(非P))に大別されるが、四国と近畿地方ではベンガラ(P)を用いる傾向があること、中国地方ではベンガラ(非P)を用いる傾向があることがそれぞれ判明した。 昨年度の調査結果でも、北部九州地域では玄界灘周辺でベンガラ(非P)を用い、筑後川下流域では、ベンガラ(P)を用いることが明らかになっており、西日本一帯で埴輪に使用されているベンガラに地域性が認められる可能性が指摘できた。 編年については明らかな差は現段階では認められない。 ベンガラ(P)に含まれるパイプ状粒子については、湖沼に生息する鉄酸化細菌を焼成して得られたものであることが先行研究で判明している。ベンガラ(非P)については、現段階では原料が何であったのか不明である。また、この地域性が何を意味するのかも今後の検討課題である。
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