本研究の目的は、日本における近世以降の景観変動に注目し、身近な自然環境の変化を、絵図を中心とした資料からみていくことであった。対象とした場所としては、(1)里山、(2)社寺林・陵墓林、(3)都市、(4)新田開発の4つを選び、特に(1)では徳島大学附属図書館、(2)では京都府立総合資料館、京都大学附属図書館、大阪歴史博物館、(3)では篠山市教育委員会、大阪歴史博物館、三井文庫、(4)では射水市新湊博物館、大阪商業大学商業史博物館においてそれぞれ調査を実施した。 平成21年度において最も成果をあげたのは(3)都市についてである。昨年度より調査を進めてきた篠山藩青山家文書(篠山市教育委員会蔵)における近世前期大坂周辺の水系を描いた絵図群に関する基礎調査の成果について、資料集の体裁としてまとめるとともに、それを関係機関に配布することができた。さらに、その成果については、市民を対象とした研究会(尼崎市)や座談会(沖縄市)にて報告することとなった。この調査成果については、一部論文(歴史学研究)として報告するとともに、現在、出版社を通じた刊行を計画し、作業を進めている段階である。 (1)に関しては、近世の里山の景観について、イメージとしての名所の景観と実体との差異を検証し、論文(上方文藝研究)として報告した。また、(4)に関しては、河内国の事例として、水利に関わる絵図を中心とした村絵図の調査成果を論文として報告した(商業史博物館紀要)。 (2)に関しては、平成21年度において重点的に文献資料を集めたうえで分析を進めており、その成果を次年度にてまとめる予定としている。
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