本研究はエスニック集住地区、特にイスラム系住民の集住地区がどのように形成・発展・衰退するのかを(1)都市内居住地移動という人口的側面、(2)集住地区が都市内のいずれの場所にあるかという空間的側面、(3)エスニック事業所の立地展開という社会・経済的側面、(4)エスニック・コミュニティにおける文化の継承という文化的側面から考察することを目的としている。 3年の研究期間の初年度に当たる平成20年度は、課題(1)、(2)の整理・検討を行うとともに、課題(3)の調査に取り組んだ。まず、現地調査の下準備として人口統計および事業所統計からエスニック集住地区の顕著に見られる街区を2程度抽出し、当該街区の空中写真から宅地図を作成した(住宅地図なるものは販売されていないため)。現地調査では1事例街区におけるエスニック事業所の悉皆調査を試みた。フィールドワークで得た資料を基にエスニック事業所の分析を行った。 アムステルダムの1地区であるゼーブルフは移民の集住が顕著に見られ、その目抜き通りの1つであるヤーファ・ストラートには移民の経営するエスニック事業所が数多く観察された。悉皆調査の結果、エスニック事業所は、食肉店、魚屋、青果店、パン屋、洗濯屋、たばこ店などのいわゆる最寄り品を取り扱う店舗が多数を占めていることが明らかとなった。また、開業から10未満、20年未満の店舗が多いほか、ムスリム系の店舗が圧倒的に多いことが明らかとなった。創業からの期間が比較的短いのは、移民のビジネス参入に対する補助金制度との関連も予見されることから、法制度についても調べる必要性があることが分かった。
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