研究概要 |
本研究は地方中核都市福岡市における都心回帰現象について,既存の統計データと住民へのアンケート調査から得たデータを使用して,同現象の実態とメカニズムの解明を目指した.また,今後の地方中核都市における都市構造の動向を予測した. 2000年以降に福岡市で人口が増加している地区は,都心地区と郊外駅の直近にある地区であった.いずれも近年になって大量の集合住宅が供給された地区である.都心地区の住民の多くは,2000年以降に入居したものが多く,分譲・賃貸に住む者はほぼ同数である.彼らの出身地は分譲・賃貸を問わず,市内出身者が30%程度いた.その他の多くは福岡市以外の福岡県や九州各県の出身者で占められ,市内だけでなく近県の住民も都心に転入していることがわかった. 世帯主の都心への転入経路は大きくほど3つ確認された.1つ目は進学もしくは初就職時に福岡市内へと移動する経路である.2つ目は,初就職後から前住地に入居する間に市内に入る経路で,分譲居住者に特徴的な経路である.3つ目は,市外から都心に直接,転入する経路で,賃貸居住者に特徴的な転入経路である. 都心居住者の多くは単身や夫婦のみ世帯,また子供の居る世帯も,子供の数が一人か二人と多くは家族員数の少ない世帯である.こうした小規模世帯の需要を受け入れることで,都心は利便性の高い住宅地として住宅需要者に受け入れられているものと思われる. その一方で,都心や郊外でも利便性の高い駅前地区に新たな住宅が次々と供給されている状況からみて,郊外住宅地の空洞化が進む可能がより高まっている.こうした状況が人々の居住地選択の幅が広げている.このことが,都市空間における住宅需要を分散しており,今後は住宅地の条件によって,選択される住宅地と見捨てられる住宅地への二極化が進行し,居住空間の再編成が進むと考えられる.これに伴い外側に広がり続けた都市構造も,都市の内部方向へと軸を転換し再編が進むだろう.
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