平成21年4月から9月にかけては、これまでの研究成果をまとめ、博士学位申請論文『ジャワにおける共同体と儀礼:女性の役割と儀礼変化を中心に』(254ページ)を完成させ、東京外国語大学大学院に提出した。論文では、現地調査のデータに基づき、ジャワにおける共同体に関する先行研究の再検討を行なった。儀礼と女性の役割に焦点をあてて地縁を中心とした社会関係を考察し、これまで集団の存在が明確でないとされてきたジャワ社会において、地縁に基づく集団意識が存在していることを明らかにした。調査地では、イスラーム意識の高まりと効率化の進行のなかで、地縁に影響力を持ってきた儀礼が変化しているが、儀礼の核とも言える料理のやり取りは、現在も重要な位置を占めていることを指摘した。 9月から12月にかけては、現地調査の準備期間として先行研究の分析を実施し、特にインドネシア以外の地域でのジェンダー研究の成果を対象とした。12月から1月にかけて(12月11日~1月9目)、インドネシア・中部ジャワ州スラカルタ市周辺およびジャカルタ特別州において現地調査を実施した。スラカルタ市周辺での調査では、結婚式や女性団体などコミュニティ活動の参与観察、宗教講話会の活動を中心に調査を行なった。また、サナタダルマ大学を訪問して現地の研究者との情報交換を行ない、研究に関する議論を実施し、関連資料も収集した。ジャカルタでの調査は、国立図書館で古い新聞資料の閲覧・複写による資料収集を実施し、調査地周辺の歴史的な資料を収集した。インドネシア科学院では、研究者と研究に関する議論、情報交換を実施し、関連資料を収集した。 1月から3月にかけては、現地調査で収集資料の分析を中心に、成果提示に向けた準備を進めた。博士論文をまとめなおし、民族誌の刊行という形でジャワの社会関係像を成果提示するのが、今後の課題である。
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