平成22年4月から11月にかけては、これまでの研究成果をまとめ、さらに現地調査の準備期間とした。これまでの研究の成果を生かし、特に地縁と女性に焦点をあてた調査結果をふまえて論文「ジャワにおけるヴェール着用者の増加とその背景」を執筆した。テーマとした女性のヴェール着用は、一見するとインドネシアにおけるイスラーム復興の一面と見ることができるが、実際にはその背景には地縁に基づく社会関係などが絡み合っていることを、フィールド調査を通じた発見をもとに分析した。また、調査成果の一般への公開という面から、調査成果を生かし、一般向けの雑誌に2本の記事を執筆し、9月、10月には所属大学の公開講座において2回の講演を行なった。11月には、岡山大学において実施された日本文化人類学会中国四国支部第34回中四国人類学談話会において、「ジャワの儀礼に見る地縁に基づく社会関係の変化」という題で研究発表を実施し、研究者および大学院生との議論を実施した。 12月から1月にかけて(12月11日~1月1日)は、インドネシア・中部ジャワ州スラカルタ市周辺およびジャカルタ特別州において、現地調査を実施した。調査期間中は、主に地縁に基づく活動(婦人会、イスラム勉強会)、誕生儀礼を参与観察した。同時に調査地内の世帯を訪問し、互助活動や地域のつながり等に関する聞き取り調査を実施した。さらにサナタダルマ大学、ガジャマダ大学を訪問し、現地の研究者との情報交換を行ない、研究に関する議論を実施し、関連資料も収集した。調査を通じ、かつて長期の現地調査を実施したときと比較し、地縁関係や儀礼の準備方法がかなり変化していることが明らかになった。1月から3月は、この変化を踏まえた分析を実施し、新たな論文の執筆および民族誌の刊行を目指した準備を行なった。
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