本研究は、植民地経験に端を発する西欧近代化、近年のグローバル化に伴い著しい社会変化をみせる東アフリカにおいて、さまざまな理由で単身の状態にある「シングル」の存在に注目する。伝統的に結婚が重視されるアフリカ社会においてはマイノリティとされ、さして研究対象にもされてこなかった「シングル」であるが、実はどの社会にも存在する。彼/彼女らは社会のなかでいかに位置づけられ、むしろどのような役割を期待され、人間関係のネットワークを築き生活戦術を展開しているのだろうか。本研究では、「シングル」の実態を調査し伝統的理念と実際、社会保障や女性の権利拡大など新たな近代国家政策との相関性を人類学的に考察し、最終的には社会変化の激しいアフリカ社会において「シングル」が生きうる新しい可能性を探りたい。 具体的な調査地は、長期の専制政治の終結後、新政権による政策の転換をここ数年間経験したケニア共和国、十数年にわたる内戦の終結を今年むかえたウガンダ共和国という、いずれも大きな変化の途にある国家における、ナイロート系言語文化の民族社会である。
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