本年度はカトリック・ファンタメンタリズムに関する文献研究を中心に進め、11月にマルタで短期間の予備調査を行った。 1. 文献研究 「カトリック・ファンダメンタリズム」という他者に対するラベリングがいかなる人々に対して使用されているかについて、新聞・雑誌・研究書を対象に調べ、現状を把握するとともに、その間のズレや語感の違いを明らかにするよう努めた。その結果、アメリカでは中絶を行うクリニク襲撃する一部のpro-lifeの人々や、出現のマリアが伝える終末論的メッセージを重視するマリア崇敬者、ローマ教皇のすべての言動を無謬であると信じる人々にして用いられる傾向にあるが、ヨーロッパでは具体的な集団名を名指す用語として用いられる傾向にあるごとが明らかにされた。このことは、ヨーロッパの場合、カトリッラク内部の関係が強く反映された用法になつていること、また、関係性に応じて「カトリック・ファンダメンタリズム」というひとつの用語が多用な意味を担っていることを示しているといえる。 2. 現地調査 2008年3月7つの大罪が追加されたため、これに関する聞き取り調査を複数個所(セントポールズベイ、アーシャ、ヴァレッタ、スウィッイ)で行ったほか(multi-sited field work)、pro-life派、終末論的メッセージを重視するマリア崇敬者、ローマ教皇至上主義を名乗る人々を対象に、各ご家庭や所属する集団の集会室、マリア巡礼地、教区教会前広場、首都ヴァレッタのカフェ等において、フォーマル/インフォーマルな形でインタビューを行った。その結果、これまで他称としてのみ論じられてきた「カトリック・ファンダメンタリズム」という用語であるが、カトリックの根本原理を体現するのは我々であるという自負を込めた自称として用いる人々がいることが明らかとなった。
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