平成21年度は主として、カトリック・ファンダメンタリズムに関する調査・研究を行い、論文及び国際シンポジウムにおいて研究の成果を発表した。 論文1「『ファンダメンタリスティック』という撰択」(春秋社・近刊)でけ、「カトリック・ファンダメンタリズム」研究のレビューを行い、問題点を指摘したうえで、マルタの宗教団体ムゼウムの活動をファンダメンタリズム研究の是非を問うという視点から報告を行った。「ファンダメンタリズム」を実体概念として用いるにせよ、関係概念として用いるにせよ、そこには他者化及び他者の「理想化」が伴う点を明らかにし、我々と同じ地平で悩む人々の「ファンダメンタリスティック」な生き方として捉えることで、ファンダメンタリズム研究を、宗教を生み出した我々人間を洞察する哲学的研究の道へと開き得ることを主張した。論文2「巡礼地はどこにあるか」(「宗教と社会」学会)では、オンラインストアでの聖地グッズの購入やネット上の巡礼地参拝が日常的に行われる現在において、物理的な移動を伴う巡礼を行うことの意味、及び、聖なるものに対する人々の認識について、マルタを事例に報告を行った。国際シンポジウムでは、オーストラリアに「引っ越し」したマルタの巡礼地(写し霊場)を対象に、トランスナショナリティと飛び地enclavesをキーワードに分析を行った。オーストラリアはマルタのエヴァンジェリカルとのつながりが深く、トランスナショナルに広がるエヴァンジェリカルの展開を捉える上でも、この巡礼地は重要な結節点となっている。
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