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2008 年度 実績報告書

タイ東北部における蛇毒の治療実践をめぐる知識人類学 : 日常的理解の分析枠組の構築

研究課題

研究課題/領域番号 20720239
研究機関福井県立大学

研究代表者

津村 文彦  福井県立大学, 学術教養センター, 講師 (40363882)

キーワードタイ王国 / 文化人類学 / 医療人類学 / 知識人類学 / 伝統医療
研究概要

本年度の研究は、毒蛇咬傷についての伝統的治療という特殊な医療状況を研究するための予備的な調査を行った。タイ王国コーンケーン県ムアン郡とナムポーン郡の2カ所の農村において、参与観察とインタビュー調査を実施し、村落周辺での蛇の生息状況、毒蛇による被害数、蛇毒治療師(蛇毒吹き消し師, moopau nguu)の特別な知識の学習過程、吹き消しによる治療のメカニズムなどについてデータを収集した。
今年度の収集データを、毒phitの治療という側面からまとめると、蛇毒の咬傷以外に、現地で「ピット・サムデーンphit smldaeng」と称される病が注目すべき要素となる。出産後間もない女性の病で、特定のものを食することによって生じるのがピット・サムデーンで、頭痛、腹痛、口の渇き、母乳の不足などを引き起こし、ときには死亡することもあるという。ピット・サムデーンを生ずる食物は人によって異なるし、病院治療でも症状が緩和することがあるという。特定の食物の摂取によって生じる体の不調、また病院治療による症状の緩和を考えると、近代医療における「アレルギーkaan phae」に近いものと思われる。しかし、ピット・サムデーンは呪術師がタブーkalamを破ったときに生じる身体の不調に近いとも考えられており、ある種の薬草や、蛇毒吹き消し師が「吹くpau」ことによって癒すことが可能とされている。近代医療でも治療可能だが、一方で伝統医療によって完治できるとも考えられているところは、毒蛇咬傷の治療とも並行する。両者を取り結ぶのが、「血にまつわる病」であることと、「身体に侵入する毒が引き起こす」と考えられている点である。これら2点が、蛇毒吹き消し師の「吹く」という治療方法と深く関連しており、「吹く」ことと「毒」、さらに「解毒」との関連性については、さらなる「毒」についての民族誌的研究が不可欠である。

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公開日: 2010-06-11   更新日: 2016-04-21  

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