これまでのインドネシアと東ティモールの国境周辺社会を中心とした紛争後の和解プロセスに関する調査の成果に、さらに同地域以外の東ティモール内陸の村落社会における複数の住民主体の和解の試みに関するデータを加え、学会および研究会における報告を通じて意見交換をおこない考察を深めた。京都大学で6月1日におこなわれた日本文化人類学会研究大会の分科会「平和の人類学」では、「国民和解にみる儀礼の流用 : 東ティモール受容信実和解委員会の活動を事例に」と題し、東ティモールの村落社会でおこなわれた複数の和解プロジェクトに関する調査成果の報告をおこなった。また東ティモールにおける国民和解をめぐる世代や立場による理解の相違について、国民意識の相違と関連づけた考察をおこない、8月に「国民和解を想像する : 東ティモールにおける過去の人権侵害の裁きをめぐる二つのローカリティ」と題し、論文を発表した。11月より国立民族学博物館共同研究「平和・紛争・暴力の人類学的研究の可能性」(研究代表者 : 小田博志)に館外研究員として参加、平成21年2月28日におこなわれた第3回研究会では「紛争後の東ティモールにおける平和構築と和解の概念について」と題し、制度的な平和構築プロセス、国民和解プロセスについて人類学の視点からどのような議論が可能か、意見交換をおこなった。3月10日には「紛争と和解の民族誌にむけて一ティモール南テトゥン社会の事例を中心に」と題し、大阪大学のグローバルCOEプログラム「コンフリクトの人文学国際研究教育拠点」「コンフリクトの人文学」セミナーで報告した。
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