本年度はこれまでのインドネシアの東ティモールの国境周辺社会を中心とした紛争後の和解のプロセスに関する研究に加え、当該地域の歴史的文脈-とくにオランダ、ポルトガル両植民地権力への包摂過程に注目し、文献調査および現地における聞き取り調査をおこなった。 平成20年度に引き続き、国立民族学博物館共同研究「平和・紛争・暴力の人類学的研究の可能性」(研究代表者:小田博志)に館外研究員として参加、民族および宗教紛争後の和解の問題についての意見交換をおこなった。6月20日には大阪大学グローバルCOEコンフリクトの人文学国際研究教育拠点研究プロジェクト「オルタナティブ・ジャスティスの世界的動向に関する共同研究」の招聘により、「紛争調停における儀礼の役割-東ティモール村落社会における和解実践を事例として」と題し講演をおこなった。8月25日から9月6日にかけて13日間の日程で、東ティモール民主共和国コバリマ県スアイで補足調査を実施、住民投票10周年をむかえた東ティモールの現在に関する聞き取り調査をおこなった。1月24日には館外研究員として参加する国立民族学博物館共同研究「キリスト教文明とナショナリズム-人類学的研究」(研究代表者:杉本良男)において、「東ティモールのカトリック教会とナショナリズム」と題し、さらに2月13日に同博物館共同研究「オセアニアにおける独立期以降の<紛争>に関する比較民族誌的研究」(研究代表者:丹羽典生)において、「国民和解を想像する-東ティモールの紛争はどのように理解されたか」と題し、本年度の研究成果を報告した。
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