本年度は、日本在来馬のうち御崎馬、野間馬、与那国馬に焦点を当て、日本馬事協会による「保護から「活用」への方針転換の中で、飼養者それぞれが新たな在来馬との関係を模索し、文化財としての在来馬の「価値」を捉え直す様相を分析した。 これまで在来馬の飼養者は「日本在来馬」「天然記念物」として国や自治体から貴重な文化財、自然資源を保護する役割を付与されてきた。日本馬事協会では、中央競馬会からの助成を得て、在来馬の保存会に繁殖や品種管理を目的とした支援を実施してきたが、競馬産業の衰退により助成が減額され、2007年(平成19)以降、保護を目的とした支援から活用を目的とした保存会活動に助成金を支出することへ方針が転換された。つまり、在来馬はこれまで貴重な「遺伝資源」「文化財」として捉えられ、補助を得て飼養するものと捉えられてきたが、今後は飼養者が自ら在来馬の付加価値を生み出し、補助に頼らず飼育することを求められていると言える。 こうした中、在来馬を調教し全国の乗馬クラブへ販売することで、在来馬に新たな価値を付与しようとする積極的な取り組みも見られる。しかしながら活用に当たっては様々な混乱も生じている。在来馬は、その土地特有の環境で生み出されてきた文化財であり、生育環境も含めて価値づけられ、その環境の中で保護することが求められてきた。そのため飼養者は、土地から切り離し、他者に飼養を託す中で在来馬の価値を保つことができるのか、何をもって在来馬の価値が決定し、何を守り何を変えてよいのか、在来馬の価値を模索しており、その詳細を明らかにした。
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