本研究は、中国ムスリムの越境移住のプロセスを史料と聞き取り調査に基づき、マクロ・ミドル・ミクロの三つのレベルの相関関係を分析することで、彼らのアイデンティティと宗教実践の変容のメカニズムを明らかにするものであった。ただし、以上の三つのレベルの動態の相関関係は、さほど明らかにならなかった。というのも、中国-ビルマ間(マクロレベル)の動態は、極めて個別・個人的なレベルにとどまっており、地域コミュニティの動向を左右するほどの性格を有していないからである。他方で、地域コミュニティの宗教実践の変容は、現地のインド系ムスリム、中東諸国へ留学した中国ムスリムたちが持ちかえった知識などによって変化してきている。
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