研究概要 |
本年度は、昨年度にデータを収集した、(1)市民を対象とした模擬裁判の評議中の発言に関する分析をアメリカ法社会学会(Law and Society Association)で報告し、(2)市民に対する権威主義的人格傾向を含むインターネット調査の結果につき、日本心理学会で報告した。なお、(1)については年度中にInternational Journal of Crime,Justice,Lawで論文として公刊した。(1)については、権威主義的人格傾向と評議中の発言、評議参加者の情報格差、司会進行権限との関連など多面的な分析を行ったものであり、集団意思決定の研究としても意義のあるものであった。情報格差のある場合、司会進行権限を持つものが持っている情報は評議に供出されやすいが進行権限がない者の情報はそうではなく、またその傾向は人格傾向によって異なるという結果であった。(2)については、当初予定の3倍ほどの多くの回答を得、権威主義的人格尺度の信頼性の推定値を新旧の尺度で算出するとともに、Big Fiveに基づく性格特性尺度や司法制度に対する社会的態度に関する尺度など、多くの関連尺度との関連で妥当性を確認した。その結果、構成概念との関係では新尺度のほうが望ましい結果であるものの、信頼性の推定値は尺度全体で見ると旧尺度のほうが高かった。新尺度の日本語訳はこれまで作られておらず、国内的にも意義のある研究成果が挙がった。
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