関係的プライバシーの観念に焦点を絞り検討を行った。現状のプライバシー権概念を再構成するに辺りプライバシー権の機能に着目し、原稿の規範的ルール上プライバシー権がどのような位置づけを持つ者とされてきたのかについて記述的検討と、これに対して批判的検討を行った上でプライバシー権概念の再定式化を試みた。 平成21年度7月に行われた臓器移植法改正の4つの論点(1.脳死は人の死である、2.子どもからの臓器提供を認める3.患者本人の意思が不明の場合家族の同意によって臓器提供を認める4.近親者に対する臓器威力提供意思を保護する)のうち、3.4.の点は、本研究にまさに呼応する点であった。現代法理論(リベラリズム法学)は、言うまでもなく個人を中心に据え、自由と平等とを基調とする思想を背景としている。しかしながら本法理論に従来内包されてきた「近しい者との関係性」の観念が、今日形を変えて法規範上、前面に押し出されつつあることの証左として、この改正を位置づけることもできる。したがって、リベラリズム法学が内包する「近しい者との関係性」、すなわち個人を主体とする権利論上の位置づけについて、特に上記臓器移植法改正問題という実践的課題を検討の契機とした。更に言えば本改正は、終末期医療、生殖補助技術利用といった人間の生の両端領域に係る法規範化の要請、という昨今の社会状況にも少なからず影響を与えることは否めないという理解の下、今後、本改正が生の両端領域における法規範化問題に与える影響を鑑み、利便性・効用の拡大という意味での社会的公益のみならず、規範的意味における本改正の意味を検討し、公表した。
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