研究概要 |
奇しくもメインランド・チャイナ沿岸部の南北に位置する上海・天津両租界における不動産慣行及び法律援用の実態比較を通じて、中華民国時期の大陸中国における物権慣行の解明に緒をつけることを目的とする本研究にとって、連合王国National Archives所蔵のForeign Office ArchivesのCrown Lease及びSupreme Court、領事裁判、外交交渉に関わる公文書、そして、Registered Files of Office of Woods,Forests,Land Revenues,Works and Buildings and successorsに含まれる租界の不動産関連ファイルは今後の研究展開において必須の史料となるであろうことが見込めた。そのため、春と秋の2回に分けて渡英し当該史料の撮影による収集を時間の許す限りで行った。編著『東アジアの民族的世界』所収の「租界に住む権利:清国人の居住問題」はその史料から得られた知見を利用した成果の一端であり、租界を抱える都市における司法・慣行実態解明の端緒を示した。ただし、同論考で未利用に終わった史料も多く残っており、東大東文研所蔵我妻栄旧蔵書と合わせて活用することで、今後の研究進展を図ることが必要である。 より広域の租界における不動産慣行の比較に関しては、補充的に収集した我妻栄旧蔵書内満鉄都市不動産慣行調査報告(蘇州・漢口部分)や英国議会文書も活用しながら継続して行う。
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